未音より男性経験が豊富な紗英から見て、どうひいき目に見ても未音は遊ばれている。

でも誰も居ない校舎の隅で弓暢を待っている未音のいじらしい姿を見て何も言えなくなってしまった。

普段は活発でボーイッシュな未音が別人の様に頬を染めて立ち尽くしている。

何とか弓暢に未音を幸せにして欲しい気分であった。

そうすれば…そうすれば康太も未音を諦めて自分を見てくれるかもしれない。

そういうヤマシイ気持ちをどうしても打ち消せず紗英は度々自己嫌悪に陥った。

きっと私が男だったら未音を彼女にするだろうなと何度思った事か…だからこそ未音は紗英にとって大切な親友である。

『あれ、未音コンタクトに変えたの?』

『ううん、度つきのサングラス。高かったんだよ』

リフトの隣の未音が真っ黒いサングラスを外して微笑む。普段は眼鏡姿を見慣れているから新鮮だ。

『良いよ未音。とっても良い。眼鏡外した方がずっと可愛い。コンタクトにしたら良いのに』