康太のウエア姿はやはり素敵だった。

たいした男でなくてもウエア姿は恰好良いものだ。まして好きな男となれば胸が高鳴るのも無理はない。

樹もそれなりに素敵だったが、康太の比ではなかった。

紗英だって美人の部類である。

その気になれば彼氏ぐらい直ぐに出来ると思っていた。

事実、コーヒーを飲んでいる10数分の間にも二回声をかけられた。

みな東京言葉の嫌な男ばかりだ。軽薄そうでスキーが目的なのか女が目的なのか分からない。

そう思ってから紗英は少し溜息をついた。

(私だってそうじゃない…)

気分直しに目の前にある初心者コースをもう一本滑ろうとレストランを出た紗英の目に見慣れたウエアが飛び込んで来た。

カラフルなウエアが目立つゲレンデで逆に目を引く真っ白い上下。

華麗に板を揃え、膝の体重移動だけで跳ねる様に降りて来た人物は紗英の姿を見つけて一気に眼前に迫った。