ロビーの隅にある小さなテーブルに乗せられた電話に留守録が入って無い事を確認したミサ子は廊下に入って二つ目の自室に入ろうとして少し立ち止まった。

一瞬躊躇してから今来た廊下をロビーの方に戻る。

そして一番ロビー側にある『倉庫』と書かれたドアを開けた。

そこには二十歳前後の金色の髪をした男がソファーに寝そべって雑誌を読んでいた。

ミサ子が入ってきたのを見て、視線だけ動かした後、すぐにまた雑誌に目を戻す。

『尚人…ごめんね、こんな部屋で…今日は予約で一杯なのよ。帰るって前以て言ってくれれば部屋空けたのに』

今日何度目かになる弁解の台詞を口にする。

そんなミサ子の言葉に男はうっとうしそうに背を向けた。

『尚人…お前大学は?今は冬休みだろうけど、ちゃんと行ってるかい?だっていつ電話してもマンションに居ないじゃない?お母さん気になってさぁ…』

『行ってるよ、心配するなって』