雄一郎は夫としても申し分なく、江里子に対して声を荒げた事なんか一度もない。

郊外に家を建て、家事は家政婦が一切をやってくれる。

日増しに江里子は自分の居場所がかえって此処には無いような気がして仕方が無いようになってきた。

雄一郎は何時でも笑っているのだ。

家に帰ってきても雄一郎の話題は江里子の全く知らない音楽の話、映画の話、留学時代のイギリスの話、政治経済の話…。

毎日毎日尽きるともない話題の洪水に江里子は相槌を打つだけで緊張した。

雄一郎に相応しくならねば…という思いが江里子を強く締め付け、新婚数週間経った頃には雄一郎の帰宅が恐怖にさえなってきた。

数少ない友人に相談しても一笑にされるだけで誰も親身になってくれない。