『もう古いって…ウエアはゲレンデでしか着てないのに…それにこんな言い方初めて』

思わず声に出してしまう。

今までの言い方だと『白いウエアを着ていたな』であって、もう古いなどと批判されたのは初めてだ。

未音は今まであまり気にしなかった手紙の主が、だんだんと意思を持ってきたような気がして肌寒くなった。

それにウエアの色まで知っているとは…。

ドレッサーの鏡に映った自分の後ろに何か得体の知れぬモンスターがいるような気がして未音は思わず振り返った。

(お前の事は何でも知ってるぞ…全部…全部だ…全て知っている)

不意にそんな空耳が聞こえたような…

後ろを振り返ったまま身じろぎもせず未音は空間の一点を激しく睨みつけた。