でも別れられない。

10才以上も歳上の男に翻弄される20歳の未音には弓暢に抵抗する術は無かった。

この髪だって弓暢が染めた方が似合うと言うから染めた。康太達には不評だった。

ブラシを引き出しに戻そうとした未音は、そこに棄てようと思って今朝入れたままになっている例の封筒を見つけた。

何時もの手紙なので詳しくは見てない。

未音は何故だか、もう一度見てみたい気分になって破り棄てた切り口から中身を取り出した。

ボールペンだろうか、細身の黒インクで、もうすっかり馴染みになった角張った文字で一行。

『白いウエアはもう古い』

(…ほっといてよ)

そのまま丸めて棄てようとした未音は、ふと考え直してもう一度手紙を広げた。

(あれぇ…何か何時もと違うなぁ)

クシャクシャになった手紙を見つめた未音は妙な違和感にとらわれた。