何か言おうとしたミサ子は鬼頭に手で制されて口をつぐんだ。

『このペンションだって相当金がかかっている筈だ。亡くなった御主人の遺産、生命保険だけじゃ無理ですよね』

『何が言いたいのです?変な言い掛かりをつけて私を逮捕したいんですか?』

怒りで頬を紅潮させながらミサ子は鬼頭を睨みつけた。

『まさか、私が知りたいのはただ一つの真実…たとえそれがどんな結果になろうとも私は刑事として真実が知りたい。それだけですよ』

口元を僅かに歪めながら鬼頭は低い声で言った。ここに来た頃のくたびれた感じはもう無くなっている。

『大牟田教授は自分の死期が近いのを感じてらっしゃったんでしょう。親しい看護師に自分が息を引き取った時に連絡してほしい人間のリストを手渡していたんですよ』