色とりどりの薔薇の花束を花瓶に入れて形を整える。

ちょっと買い過ぎたのか上の方が膨らんでバランスが悪かった。

『ちょっと多いな』

どう見ても多すぎる。このままでは花瓶ごと倒れそうだ。

仕方なく康太は何本かを取り出し新聞紙にくるんだ。

今度は良い感じである。ピンクや真紅、紫の薔薇が美しい。

花に興味の無い康太でも心から美しいと思った。高い金を出した甲斐もあったというものだ。

『良い天気だよ。窓開けるね』

そう言って目の高さにある小さな窓を開けた。

空との境界にある鉄格子が現実を哀しく語っている。

『散歩しようか未音』

『うん!』

康太の言葉に未音は弾けるような笑顔を見せた。