10月になったとたん昨日までの残暑が嘘のように収まり、心地良い秋の風が街に流れ出た。

何時も通りの服装で外に出ようとした康太は、少し考えてから灰色のトレーナーをかぶる。

それから腕時計を覗き込み少し肩をすくめた。

『未だ早いか』

もう一度机に座り、引き出しから白い封筒を取り出す。

あれから何度目を通した事だろう…。この内容は結局鬼頭には言わなかった。

今となっては手紙の中身を知るのは康太一人である。

封筒から便箋を取り出した康太はもう一度それを読み始めた。