あんな惨劇があったペンションに泊まる物好きな客等いるはずもなく、事件以来予約は全く入っていなかった。

この状態が続くようなら傷が浅い内に此処を売り払わなければならない。

幸い借金は無いので土地を売れば、それなりの金になるだろう。

それを元手に尚人と何か始めてもいい。尚人が全てを話してくれて、また昔のように二人で支えあって生きていけばいいのだ。

そしていつか尚人が結婚したら可愛いお嫁さんと仲良く暮らそう。

警察から尚人が開放された嬉しさが不安を覆い、ミサ子は無理に空想の世界へ思考を移そうとした。

(楽しい事ばっかり考えよう)

尚人が話してくれればそれで良いし、話してくれなかっても、こちらから問い詰めるのは止めよう。

とりあえず二人になったのだ。

今夜は息子の好きな料理を作ろうと顔を輝かせながらミサ子は玄関ホールの窓を開けた。