強いクセッ毛なのか丸まった頭髪が豊富に生えている。泣き声も元気一杯で申し分なかった。

ただ…ただ江里子が産んだ息子は真っ黒い肌を持っていた。

ただそれだけである。

隣に立ち尽くしていた雄一郎がゆっくりと江里子に背を向けた。無言で分娩室を出て行く。

室内は重苦しい雰囲気に包まれ看護士達もどうしていいのか分からず目を伏せた。

『ありがとう赤ちゃん…私の大事な息子』

江里子は自分の子供を抱きしめた。その濡れた顔に頬を寄せる。

これで良かったのだ。

これで安心して眠れる。

二人で生きていこう。この子と二人で頑張ろう。

心の底から安心した穏やかな表情で江里子は息子を抱きしめた。