(…駄目だ!)

心臓が破裂するかと思った瞬間、康太の右手は未音の右手首を掴んでいた。

慌てて鬼頭が駆け寄り一緒に落ちそうになっている康太の体を支える。

『康太…!』

右手一本で宙に浮いている未音は驚いたように康太を見上げた。

『未音…今、引き上げるから』

体を投げ出し左手も添える。

『俺は未音が…未音が好きだ!未音しか見えない、未音じゃなきゃ駄目なんだ!』

暗闇に宙づりになっている未音の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

『康太…ありがとう』

そして未音も左手を康太の手にかける。

(助かった!)