『気持ち良いね康太』

体一杯に夜風を受け未音は目をつぶった。

二人の距離は3メートル。飛び付けば未音を抱きとめる事が出来るか…。しかし、それに驚いた未音が跳び下りてしまうかもしれない。

『未音…おいで。危ないよ』

何とか話を引き延ばそうと少しずつ進むが未音は再び首を振った。

『康太…幸せになってね』

未音が手を離すのと康太が地面を蹴るのとがほぼ同時だった。

未音の体がゆっくりと後ろに倒れる。後ろで見ていた鬼頭も思わず駆け出していた。

(間に合ってくれ!)

右手を力一杯突き出す。

未音の体は完全に宙に浮き足は投げ出されている。