それに憔悴しきった未音の様子が心配だった。

日中何度電話をかけても出ない。大学にも出てきていない所を見るとマンションで眠っているのか。

もちろん心配なのは未音の体だが、それ以上に彼女の精神が今日の事態を乗り切れるかどうかが気掛かりだった。

もし耐え切れず警察に駆け込むような事になれば…それだけは阻止しなくてはならない。

やっと築き上げた現在の地位を、たかが二十歳過ぎの小娘に奪われるのなんかまっぴらだ。

未音の事は確かに好きだが1番大切なのは自分である。

その気になれば愛人の一人や二人、いくらでも出来るだろう。

群がる女生徒の中からどうして未音のような貧乏クジを引いてしまったのか、弓暢は悔やんでも悔やみ切れなかった。

それにいくら保守的でエゴイストの弓暢でも妻の死に顔は恐ろしかった。