弓暢も眠っていなかった。

午後に講義があった為、体を引きずりながら大学ヘ行ったのだが心は上の空、目には大きな隈を作っていたので、生徒からも夜更かしだろうとからかわれてしまった。

弓暢にとっても死体を埋めるのは初体験である。

魂を失った人間があれほど重いとは知らなかったし、ましてそれが自分の妻だとは…。

確かに愛情は無かった。

未音の様子や荒れた部屋を見ても、慶子が先に突っかけた事は用意に想像出来る。

口うるさく夫を小馬鹿にしたような態度にも心底飽き飽きしていた。

でも自分が浮気をしている手前、離婚は切り出しにくい。

慶子の方から離婚してくれと言われれば両手を上げて大歓迎だったが、こんな形で夫婦生活にピリオドが打たれるとは思わなかった。