ここは和歌山県の端、新宮市にある南紀唯一の総合大学『蓬莱学園大学』の学生食堂。学生とは言っても総生徒数2000人の巨大な胃袋を満足させなければならない為、大手のファミレス並の充実度を誇っている。

欲を言えばアルコール類が無いのが未音達には不満だった。

今、窓際のテーブルに向かい合って座っている藍原未音、宮崎紗英、浜口康太、仲村樹の四人は同じ英文学科に席を置く仲間である。特に未音と康太は小学校からの同級生で家族同然に過ごしてきた。

四人は学科も同じながら南紀では珍しいスキー部に在籍している。

高校の修学旅行で体験したスキーが忘れられず大学に申請して無理やり作ったのだ。

しかし部員はこの四人しか集まらず、結局は同好会扱いで補助金も出ない弱小サークルに成り下がってしまった。