未音は恐ろしい夢を見ていた。

逃げたいのだが体が動かない。

見てみると足首に土色に変色した手がからみついている。

必死にそれを振りほどく。

バキッと嫌な音がして手首がちぎれた。

それでも未音の足首からは離れてくれない。

バランスを崩して倒れ込んだ未音の体目掛けて地中から無数の手が出て引きずり込もうとしてきた。

一本は未音の手を握りしめ、一本は髪をつかむ。

(助けて先生、助けて康太、紗英、樹君、お父さん、お母さん!)

言葉に出そうとするが舌がもつれて出て来るのはうめき声だけだ。

(ごめんなさい、ごめんなさい、奥さんごめんなさい!)

一本の手が未音の口に入ってきた。

喉の中に拳をねじ込もうとしてくる。

『いやぁ!』