悪い気分ではなかった。

男に誘われてデートした事も食事した事も、今までに数え切れない程ある。

今回のデートコースだってお決まりのパターンではあった。

でも紗英は心の底から楽しいと思った。

隣に座ってカクテルらしきものを飲んでいるのは同じサークル仲間である仲村樹。

高校からの同級生である。

未音と康太は幼稚園から一緒なので殆ど肉親と言っても良いような間柄に見えたが、自分達はまだ互いに遠慮を感じてしまう関係だ。

でも数多い男友達の中では康太と樹が1番話す機会が多い。

一緒にスキーにも何回か行っているし(もちろん二人きりではない)端から見れば恋人同士に見えない事もないだろう。

それに今日の樹は自慢の長髪をバッサリ切り落としてきたのだ。