何時も通りの朝、何時もと変わらぬ風景…しかし自分の手には慶子を殴った感触がはっきりと残っている。

瞼には眼球が飛び出した慶子の表情が焼き付いている。

自らの手によって一生を終わらせてしまった慶子への懺悔と自分の両親への申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうになる。

今日はとても大学に行く気になれなかった。

『先生は強いな』

呟きながら部屋を片付ける。

慶子に割られた花瓶やフローリングに飛び散った血は何とかなったが、壁に付着した血痕には苦労した。

以前通信販売で購入した外国製の染み抜きを試してみるが、血痕は想定してなかったようで思った程効果がない。

そうしている内に昨夜の精神的肉体的疲労で激しい睡魔が襲ってきた。