貧しかった学生時代に取り立てにやってきた金融業の男達、泰明を見て嘲笑した若い女、見下したように馬鹿にする暴力団のチンピラ達…それら全てが同僚の姿とダブる。

口を歪め意味不明の言葉を吐きながら泰明は三沢の首に両手をかけた。

恐怖で三沢の目が大きく見開かれる。

(ざまあ見やがれ!…殺してやる!殺して…)

その瞬間、泰明の視界が真っ赤に染まった。

何が起きたのか分からず振り返ろうとするが足が動かない。

必死で上半身だけで振り帰ってみると、後ろに銀縁眼鏡の男が震える手でガラス製灰皿を振りかぶっていた。

『や、ま…ね?』

その灰皿から血が滴り落ちる。

『あ、あっち行け!』

山根が両腕を力一杯振り下ろした。

そしてテレビの電源を落とすように泰明の視界は完全に閉ざされた。