『でもね門田君、君の話にはどうも一貫性がないんだよ…もう少し順序だてて話してくれないかね』

『は、はい…ですから』
『先ず倒産した協栄商会に融資した5億の担保は?残った債務は?それに担保の優先順位は?』

矢継ぎ早に質問してくるのは支店長の木下である。

牛乳ビンの底のような眼鏡を人差し指でしきりに上げながら神経質そうな小さい目で泰明を睨む。

回りには同期入社で大卒エリートの面々が薄ら笑いを浮かべながら泰明を取り囲んでいた。

『それはですね、担保は…その、こちらに添付してます書類の土地でして、200坪ありますので、坪単価…』

『門田君頼むよ…この土地の公表地価は坪50万ちょっとじゃないか。市場価格を2倍にしても、これじゃ2億にしかならない事は君だってよおく知ってるだろ?僕が聞いてるのは、そういう事じゃないんだから』