『うるさい!俺は一人が好きなんだよ』

『硬派ぶっちゃって、本当は女好きのくせに』

思わず苦笑する。

未音が好きだ、ずっと好きだと言えればどれほど楽になるか。今までも何度その言葉を飲み込んだか。

でも今のバランスを崩したくはなかったし、それに何よりも愛する未音を困らせたくなかった。

『康太って此処にはよく来るの?私はお父さんの車に乗せて貰って通り過ぎるだけだから歩いて来たのは初めてかもしらない』

『そうだな、昔からよく来るよ。嫌な事があったときとか、一人になりたい時とか此処で川を眺めてボオッとするんだ。そしたら忘れられる』

『ふうん、康太のお気に入りの場所なんだ』

言い終わって未音が体を震わせる。

『ちょっと寒くなってきた』

『じゃあ帰ろう、橋を下りるまでこれでも着ておけ』