『気持ちいいね…ありがと康太』

川風を全身に受けながら未音は微笑んだ。

和歌山県の端っこに所在する新宮市と隣の三重県を隔てる一本の大河、それが熊野川である。

そこに掛かる熊野大橋の真ん中で二人は欄干にもたれながら話をしていた。

『ヘ?別に俺は…』

『私が元気ないから誘ってくれたんでしょ?康太って以外と優しいもんね』

『以外とはないだろ』

口を尖らせて康太は抗議した。

自分はずっと未音を守ってきた自負がある。