だから今は幼なじみとして、一人の友人として未音を見守るだけである。

紗英と樹を入れた四人の微妙な関係は気に入っていたし、大学生活は何より楽しい。

校門をくぐり自転車置場にMTBを置いた康太は、人工芝の中庭で寝転がって本を読んでる樹を見つけた。

相変わらずの似合わない長髪である。

『よお、授業は?』

面倒臭そうに視線を康太へ移した樹は、ゆっくりと本を閉じた。

『なに読んでるんだ?』

『カフカ』

『カフ…何だそれは?』

『別に何だっていいよ』

長髪を掻き分けながらため息をつく。

『テンション低いなあ』