そうしている内に信号が青にかわる。

今度はゆっくりとペダルに力をかけながら何時しか自嘲的な笑いになった。

(俺には関係ないさ…あいつには弓暢がついてる)

どう自分を殺しても康太は未音が好きだった。

中学校の時から度の強い眼鏡をかけているが、その素顔は驚くほど愛らしい。

何故か急に染めた茶髪はあまり似合っているとは思えなかったが本人は気に入っているようなので、それはいい。

その小さな体に秘められた驚く程のバイタリティに康太は何時も圧倒されっぱなしだった。

これでも小さい頃は自分が泣き虫の未音を守ってやったのである。

未音は何時も自分の背中に隠れて泣いていたような記憶があるが、何時しか成長した未音は精神的にもすっかり強くなってしまった。

(昔は康太君のお嫁さんになるって言ってたくせによ)

心の中で悪態をつくが、そんな約束なんの効力も持たないし、言った本人が忘れている事もよく分かっていた。