都会よりも自分の我が儘が通せると思ったのもあるし、やはり東京の水が合わなかったのもある。

しかし、やはり人生はうまく行かない。

就職して僅か半年で、そこが倒産してしまったのである。おりしも不況の真っ只中、他からあぶれてきた紗耶香を雇う所など皆無だった。

そうなると何の資格も特技もない紗耶香に残っているのはただ一つ。

女という事を武器に馬鹿な男から夢への援助をしてもらう事だ。

偶然街で声をかけてきたのが、その筋のスカウトだった為、話はとんとん拍子に進んだ。

元々美貌で幸運にもモデル並の体を持っていた紗耶香は、それからの3年間で倒産した出版社時代より10倍以上の月収を得るまでになった。

今となっては下腹の突き出た醜い中年男に身を任せる事も苦痛ではない。

すべてはビジネス。生きて行く為に働く行為が出版社であろうと、紗耶香の仕事であろうと、何の違いがあるというのだ。

(でももう潮時かな…人生うまくは行かないから。そろそろ失敗する頃だわ)