鈍い痛みを後頭部に感じながら未音はゆっくりと体を起こした。

昨夜のアルコールがかなり残っているらしく、口の中が粘っこい。

(えっと…何時に帰ったんだっけ)

昨夜はこの冬三度目のスキーから帰ってきて、康太、紗英、樹のスキー部員に顧問講師の弓暢を交えた五人で打ち上げを行ったのだ。

日増し暖かくなる名残惜しさと、確実に少なくなっていく社会への猶予期間残高に皆、鬱憤を晴らすかのように痛飲した。

しかも最初のスキー合宿では、あのような恐ろしい事件に巻き込まれている。

第一発見者の未音は少なからず他の部員とは違う扱いを警察から受けた。

もちろん疑いは直ぐに晴れたが皆、気を使ってその話題には触れない。

3件目で樹が酔い潰れ宴はお開きとなったが、その時には未音達もかなり泥酔していた。

『あれぇ…思い出せない…どうやって帰ったんだろう』

樹をタクシーに乗り込ませ、確か弓暢が付き添って帰ったような記憶があるが遠く霧に包まれたように定かではない。