シナモンスティックかと思った細長い棒はどうやら煙草らしい。

ここまで来ると田舎者の尚人でも状況が飲み込めた。

『これって…麻薬?』

『まさか。そんなに怖い物じゃないわ。ただの葉っぱよ。オランダとかじゃ日本の煙草と同じ合法なの。こっちでもそのうち許可されるんじゃない?』

言いながらマッチで火をつける。

ほんのり黄色がかった濃い煙が尚人の鼻腔をくすぐった。甘ったるい芳香がテーブルを包む。

煙草は吸っているので同じ感覚で火を付けた尚人は、気管を圧迫するような強烈な刺激と、ワサビを食べた時の様な鼻を突き上げる香りに視界が狭くなった。

かろうじて咳込むといった醜態はさらさずに済んだが、涙目にはなったかもしれない。

しかし店内の薄暗さが幸いして紗耶香にばれずに済んだ。