その瞬間。
「…っ……」
龍輝さんの視線が私をとらえる。
「真由」
「…は、はいっ…」
「今、何か言った?」
へっ…?
あっ…。
「な、なんでもないです!
ごめんなさい、ほんと、なんでもないんです…!!」
「あー…そっか?
わりぃ、周りがうるさくてあんま聞こえねー」
「いいんですほんとっ!! なんでもないですから…!!」
…騒がしいゲーセンに感謝っ!!
聞こえてなくてよかった…。
こんなところで「大好きです」とか何言っちゃってんの私。
もうほんと、最低すぎる…。
「なんでもないならいいけど、顔赤くね? 大丈夫か?
疲れたのならちゃんと言えよ? そん時はすぐ外出るから」
「はいっ…!!」
うぅ…顔があっつい。
なんか一気に体力使った気分…。
…でもほんと、聞こえてなくてよかった…。
もし龍輝さんに聞こえていたら、今のこの楽しい時間はきっと終わってた。
私たちは今のこの距離だから楽しく話すことが出来てる。
これ以上近づいたら、その楽しい時間が終わっちゃうんだ。
だから近づいちゃいけない。
この距離を保つことが幸せなんだ。
「…このままでいいんだ」
さっきよりももっとずっと小さく放ったその言葉に、龍輝さんは振り返らなかった。
でも、それでいいんだ。
私は今、幸せなんだから…。



