「おーい真由、どした?
早く来ないと置いてくぞ?」


いつの間にか歩き出していたみんな。

遠くに見える龍輝さんに笑顔を見せて駆け寄る。




…私にはこれが限界なんだ。

龍輝さんの4歩後ろを歩くだけで、精一杯。


二人きりになる時間はあったし、色々話すことも出来たけど。

でも、この4歩より先には近づけない。


龍輝さんの世界に私が入り込むなんて、そんなの出来ないんだ。




「どした?」


優しく笑いかける龍輝さんを見るたびにドキドキは増していって、彼に近づけたような気になるけれど…。


「いえ、なんでもありません」


…私と龍輝さんは住む世界が違う。

それがわかってるから、私はなんでもないような顔で笑ってまた4歩後ろを歩く。




…これ以上近づけない。

でも、この距離でも幸せだ。


「四聖獣」の龍輝さんのこんな近くに居られるんだもん、幸せだよ。

他のファンの子たちよりはきっとずっと近くに居ることが出来てる。


だから幸せだ。




「日曜日、楽しみですね」

「あぁ、期待外れになんなきゃいいけどな」

「あはっ、そうですね」


4歩後ろから声をかけ、それに振り向く龍輝さん。

この距離でいい。
そう言い聞かせ、私はまた小さく笑顔を見せた。