大雅さんがにっこり微笑む。
「それって真由ちゃんのことなんでしょ?」
…え、 私!?
「あぁ、あん時の真由は面白かったな」
えぇ!?
あのとき私、面白いことしてたっけ!?
「さっさと逃げりゃいいのにさぁ、そのまま固まってんだもん。
あいつらに“やめてください”って言ったんだっけ? その声がもう馬鹿みたいに細くてさ。
お前は生まれたての仔猫かよ?って思ってた」
あ、あの状況で逃げられるわけないじゃんっ…!
それに、怖くて声なんか出なかったし…。
「でもまぁ、女を放っとくわけにはいかないじゃん?
だからさっさとケリつけたわけ。
そしたらさぁ、コイツ今度は俺の顔見てビビってやんの。
そりゃあ血だらけだったし?驚くのはわかるけどさぁ、あの顔は無いわー」
「え!? そ、そんなに変な顔してました!?」
自分の顔なんて全然意識してなかった。
て言うかそこまで頭回ってなかったよっ…!!
「あーなんかこう、泣きそうな感じ?
でも目は真っ直ぐでさぁ、すっげー力強くて。
怖がってるくせに一生懸命で、なんかこう、可愛かったんだよなぁ」
え!?
か、可愛かった…!?