「真由ちゃんと二人きりになれる時間あればいいなぁ」
…って、なんでそれを大雅さんが言うのぉ…。
龍輝さんにそう思ってもらいたいよっ…!!
「あ、映画の最中こっそり抜け出せば二人になれるんじゃない?」
…それを今言っちゃったら、こっそりでもなんでもないと思う。
でも大雅さんはそんなことなんて気にもせず、「どうやったら二人きりになれるか」を一生懸命考えてる。
全部全員に丸聞こえなんだけどね…。
「…大雅、予定が決まったらメールして? 先に帰るよ」
ふと、十朱さんが言う。
「えー? 朔ちゃんが居ないと龍輝が可哀想じゃん」
「…ぶん殴るよ? とにかく俺は帰るから、テキトーに決めてメールして」
ひらひら、と手を振った十朱さんは、ほんの少しだけ私を見た。
「………」
でも何を言うでもなく、ただ何事も無かったかのように廊下へと消えていった。
今のは、なんだったんだろう…?
「ごめんね、朔ちゃんああいう奴だからあんまり気にしないで?」
「あ、はいっ…」
「長いこと一緒に居るけど、いまだに謎な奴なんだよねぇ…」
髪の毛をかき上げ、大雅さんはちょっとつまらなそうな顔をした。
けれどすぐに映画の話を振って龍輝さんと笑い合う。
武蔵野さんと優ちゃんも、なんだかんだ楽しそうに笑ってる。
私はどちらの会話にも上手く入れなくて、ただ笑顔でうんうん頷くしかなかった。



