すぐ目の前の笠井さんが、真っ直ぐ私を見てる。
それだけで心臓が破裂しちゃいそう…。
「た、大雅さんのことは、みんなもそう呼んでたから、ついっ…」
「俺もみんなに名前で呼ばれてるよ?」
「そ、それはそうかもしれませんけどっ…!」
好きな人の名前をいきなり呼んだりなんか出来ないよっ…。
「…真由。 俺がいいって言ってんだから名前で呼べ」
「で、でもっ…」
「いいから、名前で呼びな?」
う…。
名前を呼ぶまでは、解放してくれそうにない…。
ドキ ドキ ドキ....
笠井さんの名前…、たった3文字なのに、口が上手く動かない…。
「あ、あの…」
「うん」
「た、たつ…龍輝、さん…」
…やっと名前を言えた時、廊下では授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。



