はぁ、はぁ、はぁ…。
私と笠井さんの乱れた呼吸音がトイレに反響する。
「くそぉ油断した。 赤井センセの授業だったのかぁ」
ははっ、と髪をかき上げる笠井さん。
ため息が出てしまうくらい、笠井さんのすべてがカッコイイ…。
「真由、大丈夫?」
「あっ…」
うわっ
顔、近いよっ…!
「だ、大丈夫です。
それよりも…、大雅さんは大丈夫でしょうか?」
「んー? まぁ大丈夫だろ。アイツ足速いし」
「あ…そう、なんだ…よかった」
…よかった。って、実際大雅さんが逃げ切れたかどうかはわからない。
でも笠井さんが「大丈夫」と言ったらすべてが大丈夫になるような気がしたから、ホッと胸を撫で下ろした。
「で? なんでアイツのことは名前で呼ぶのに俺は“笠井さん”なんだよ?」
え!?
またそれ…!?



