「うわー、やっぱ龍輝ってサイコーの馬鹿だわっ!」
お腹を抱えて笑い出した大雅さん。
それを見る笠井さんは、「意味がわからない」といった顔で首を傾げてる。
「あのさ龍輝、俺とこの子の話聞いてた?」
「そりゃあ、聞いてたけど?」
「それなのに急に名前の話?
龍輝ってほんっと、馬鹿だよなぁ」
「あー? つーか女のことしか考えてないお前に馬鹿とか言われたくない」
「ふぅん? じゃあ龍輝は普段何考えてんのさ?」
「メシのこと」
「うわ、馬鹿じゃん」
「うるせーなぁ」
ギャーギャー騒いでじゃれつく二人は、そのまま私の存在なんて忘れてしまったかのように別の話をし始めた。
…安心と、ほんの少しの寂しさを感じながらふぅっと息を吐いた。その時…――、
「笠井!桜庭!またお前らかッ!!」
――…騒いでしまったせいで、体育館で授業中だったらしい体育の先生が般若のような顔でやって来た。
「やっべぇ、逃げるぞ!」
「えっ…!?」
に、逃げるって…、え、ちょっと…。
笠井さんが、私の手を握ってる…!?
「真由ちゃーん、またねー」
「あっ…」
別方向に逃げる大雅さん。
それを追う先生。
私と笠井さんはなんとかそこから脱出し、あまり人の来ないトイレへと逃げ込んだ。



