教室に居る人たちに気付かれないよう体を屈めながら廊下を進み、校舎を出る。
向かう先は…、体育館裏らしい。
体育の授業に励む人たちの声を遠くに聞きながら、笠井さんから離れないように進んでいく。
そこに居たのは…、
「龍輝遅かったねー…って、なんで女の子連れてきてんのさー?」
「ん? まぁ成り行きでな」
「ふぅーん」
…茶髪にピアス、シルバーアクセサリーをジャラジャラつけた派手な男の人。
えっと…、大雅さん、だっけ。
「こ、こんにちはっ…」
「こんにちはー。
て言うかキミ、朝の子?」
「あ、はいっ…!」
「へぇ〜…スッピンも可愛かったけど、化粧してるのも可愛いね」
…ジロジロと遠慮なく私を見て、ニヤリと笑う姿に背筋がゾクリと冷たくなる。
「あ、今構えたでしょー。
やだなぁ、別に取って食べたりしないよ?」
「あ、はは…」
…やっぱり背筋が寒くなる。
「で、キミの名前は?」
「へ?」
「俺は桜庭 大雅。で、キミは?」
あ…そっか。
私、自分の名前言ってなかったっけ。
「えと…加藤 真由です」
そう言った時、
「へぇー、お前、真由って名前なんだ?」
「え?」
大雅さんより先に言葉を発したのは、笠井さんだった。



