「あ、あのっ…笠井さん!」

「あー、龍輝でいいよ? みんなもそう呼んでる」

「そ、そんなことより! なんで男子トイレに…!?」


「うわ、そんなことよりってひどくない?
つーか、男子トイレがどうとかより、俺の名前の方が重要だと思うんだけど?」


…っ…顔、近いですっ…!!




「…まぁいいや、鏡見てみ?」

「へっ…?」


男子トイレの鏡に、自分の顔が…って…――、


「わっ…」


――…コレが、私…?


凄い…なんだか私…、


「……私、お人形さんみたい…」


なんて言葉に、笠井さんは笑う。




「自分の顔に見とれてやんの」

「…っ……」


「まぁ、きっと誰でも見とれると思うけどな」

「え…」


…みんな、って…もしかして廊下に居た人たち、みんな私を…?

…ううん。
まさかそんなこと、あるわけない。


「………」


…でも…、自分で自分に見とれちゃうくらいだから、もしかしたら…。


………。


「…もしかして私、今すっごく可愛い、ですか…?」