「な、何言ってんの!?
お世辞言ったって何も出ないよ!?」

「えー? お世辞じゃなくて本音だよ?
真由ちゃんってすっごい肌綺麗だし、目だってパッチリしてて可愛いじゃん。
化粧したらもっと可愛くなると思うなぁ」


いやいやいやっ!
目がパッチリで可愛いのは優ちゃんでしょ!

私なんて全然、優ちゃんには敵いませんから!!


「ねぇ、化粧してみない?」

「へっ!?」


お、お化粧…!? 私が…!?




「次の休み時間やってみようよ。ね?」

「はい!?」

「私がバッチリしてあげる!」


……と言った優ちゃんは、私が返事をする前にニコニコ顔で自分の席に戻っていった。






「…私が、お化粧…」


そんなの、考えたこともなかった…。




「………」


…お化粧したら、少しでも笠井さんに近づけるかな?


そう思いながら、天井を僅かに見上げる。




授業開始を知らせるチャイムが鳴る中、中庭の方から先生の怒鳴り声が聞こえてきた。


「龍輝、助けて!!」


そんな風に笑うチャラ男さんの声を遠くに聞きながら、小さく小さく息を吐いた。