……私、やっぱり笠井さんのこと…――。
「真由ちゃん、大丈夫?」
「――…え?」
あ…優ちゃんのこと、忘れてた。
「ご、ごめん…大丈夫」
………。
もう行ってしまった笠井さんと十朱さん。
深呼吸しながら「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせる。
でも。
「もしかして、あの人に見とれてた?」
ドキッ....
優ちゃんの言葉で、顔が急激に熱くなる。
「あ、あのっ…!!」
「あはは、顔真っ赤。わかりやすいなぁ」
「…っ……」
うぅ…私の気持ち、優ちゃんにバレちゃった…。
「それじゃあ、邪魔して悪かったかな?」
「そ、そんなことないよっ…!!」
「ふぅん?笠井さんの手、握ろうとしてたのに?」
「う…」
…確かに私、優ちゃんが来なかったら…、あのまま笠井さんの手を握って一緒に行ってたと思う。
否定出来ないのが悔しい…。
「でも、面倒な人を好きになっちゃったねー。
学校の女子ほとんどがライバルだよ?」
「あ、はは…」
……そう、なんだよね。
優ちゃんが言うように、ほとんどの女子が笠井さんのファンだと思う。
そんな中で、私みたいな地味な奴が笠井さんの彼女になる可能性は、ゼロ…。
デートに誘われてドキドキしたり、「また来る」って言われてワクワクしても、全部無意味なコトなのかもしれない。
…笠井さんが私を選ぶわけがない。
私なんかよりも可愛い子はいっぱい居る。
すぐ目の前の、優ちゃんとか…。
なんて思っていたら、
「……優ちゃんみたいな顔だったらよかったのになぁ」
つい、そう言ってしまった。



