龍輝さんの体が離れる。
それと同時に、はぁ〜あ、と深いため息。


「あ、あの…龍輝さん…?」


…もしかして、怒って、る…?




「…ごめん、やり過ぎた。
送るから準備して? 先に外出てる」

「あ……はい…」


…もう一度息を吐いた龍輝さんは、私の顔を見ることなく、それ以上声をかけることもなく、ひらひらと手を振って部屋を出ていった。




「龍輝さん…」


私の気持ち…想いを伝える前に、龍輝さんは行ってしまった。




…そして、

外に出てからの私たちは、何も話さなかった。


龍輝さんは私の4歩前を歩き、チラリとも振り返らない。

だから私は何も言えなかった。
ううん…、声をかけるのが怖かった。

言葉をかけた瞬間、すべてが終わってしまうような、そんな気がしていたから…。




……。




「じゃあな」


…昨日と同じ場所で別れる私たち。

龍輝さんはいつもと同じように笑ったけれど、私はやっぱり上手く言葉が出せなくて…、ただただ、小さく頷くだけだった。