「…っ…と……」


龍輝さんは少しだけバランスを崩したけれど、逆の手をテーブルについて私を見た。

凄く驚いた顔で、どうすればいいかわからない。といった感じだ。


…と言うか、引き止めた私自身、どうすればいいかわかんない…。




「あ…あの…、えっと…」


う…周りの人みんなが、私たちを見てる…。

どう、しよう…。




「あ、の…」

「………」

「えっと…あ…ごめんなさい…。
すみません、でした…」




…結局私は、それしか言えなかった。

それだけを言って、そっと手を離す。




「…帰ります。
ほんと、すみませんでした」


そのまま私は、何も注文しないままファミレスを出た。




……。




「…なに、やってるんだろ…」


薄暗くなってきた空をボーッと眺めながら、はぁ…と小さく息を吐く。


私と龍輝さんはもう、おしまいかな…。

全然恋人らしいことなんてしてないけど、でももう、ダメだ。




…「ごめんな」と言って去ろうとした龍輝さん。
私はそれを止めることが出来なかった。


だからもう…、ダメなんだ…。




「………」


…胸がギューッと痛む。

苦しさに、潰されてしまいそう…。


(…泣いちゃ、ダメ…)


…家に帰るまでは、泣いちゃダメ。

そう思ってるのに、涙が溢れ出してくる…。