ビックリして振り返った先に居たのは、茶髪を盛りに盛ったケバい女子集団。


「龍輝くんと居た女、あんたでしょ」


リーダーらしき女の人がキッと睨み付けてくる。


廊下は一気に静まり返り、そしてひそひそ声が聞こえ始める。


ヤバい…。
龍輝さんと一緒に居たことが、バレた…。




「映画館に入ってくとこ、私見たんだからっ!」

「……え?」


ビシッと指を差された。けれど…、

…その先に居たのは、私じゃなくて優ちゃんだった。




「仲良さそうにチケット渡して入って行ったじゃない!!
あんた、龍輝くんの何なのよ!?」


…そう叫ぶ女の人に、優ちゃんが「はぁ?」と小さく言ったのが聞こえた。




「…私が誰と居ようが、別にあなたたちと関係ないと思いますけど?」

「…っ……」


…優ちゃんの声は、とにかく低かった。
いつもキャッキャ言ってる優ちゃんからは想像もつかないほど低くて冷たい言葉。

それに女の人たちはたじろぎ、視線が定まらなくなる。


「私が四聖獣の笠井さんと居たからなんだって言うんですか。
あぁ、あなたたちの中の誰かが笠井さんの彼女だって言うのなら、さっきの問いに納得の行くお返事をしますよ。

でも違うのなら、返事をする義務なんて無いですよね?
言っときますけど、“四聖獣のファンだから”ってのは理由になりませんからね?

そんな馬鹿馬鹿しいもので私や笠井さんのプライベートを侵害するのはやめてください」


………。

優ちゃんの言葉に、また廊下はシンとする。




「な、なんなのよあんたッ!!」


直後、
彼女たちの中の一人が、優ちゃんに掴みかかった。


ちょうどその時…――、




「お前ら、何やってんだ」




――…ケバい女子集団の後ろに、「四聖獣」の姿が見えた。