太一はわかっているのだろうか。


この苛立ちの原因。


誤解してるとか?


「……帰る」

「唯織」


ドアノブに手をかけたあたしの後ろから声が追いかけてきた。


「わかってるから」


あたしは黙って部屋を出た。


わかってるって何を?


わかってて知らないふりをしてくれてるってこと?


もともと太一から言い出した関係だ。手放したくないってこと?


それはそれで嬉しいけど……あたしはさっさと終わらせたい。


何も言えない自分が憎らしい。


そして、あたしは高校を卒業した。


それでも太一に何も言えない自分は何をしているんだろう。