その途端、中野和也の歩みがピタッと止まった。そして私を振り向くと、


「なんで高木さんの名前が出てくるんだよ?」


 と言って私を睨みつけた。

 しまった……。小山君から口止めされてたのに、つい高木千尋の名前を出しちゃった。でも、まあいいか。


「あなた、高木千尋が好きなんですってね?」


「だ、誰に聞いた?」


 さすがの中野和也も狼狽えたようだ。


「あ、修平だな。修平から聞いたんだな?」


「そうよ」


「あんの野郎……」


「あんなブスのどこがいいの?」


 私はわざとそう言って中野和也を挑発した。すると案の定、


「高木さんはブスじゃない!」


 と、中野和也は怒鳴った。小山君の話って、本当だったんだわ……