なぜなら、本来私が中野君からお礼を言われる謂われはない。今日私がした事は、ほとんど役には立たなかったけど、全部ちいちゃんのためにした事だ。


 それに対して中野君がお礼を言うという事は、中野君の立ち位置が、ちいちゃんの側にある、という事の証しだから。


 そんなのは当たり前の事で、今更ショックを受ける私がどうかしてるんだけど。



「私やっぱり……」


「俺さ……」


 “中野君の事は諦める”と言おうとしたら、中野君と被ってしまった。


「あ、ごめん。“私やっぱり”の続きは何だ?」


「私こそ、ごめんなさい。中野君から先に言って?」