「こんなもの……!」


 そう言って、お母さんは私の眼鏡に手を掛けた。


「やめてよ!」


 私は反射的にその手を掴み、お母さんを押し退けていた。


 お母さんは、私に押された事にショックを受けたみたいで、目を見開いていた。今まで、こんな事は一度もなかったから。


 “ごめんなさい”って言おうとしたら、


「そんな顔、許さないわよ!」


 とお母さんに怒鳴られ、“売り言葉に買い言葉”じゃないけど、


「私の顔をどうしようが私の勝手でしょ! お母さんは関係ない!」


 と、怒鳴り返してしまった。本当は、そんな風には思ってないのに……


 見る見るお母さんの目が涙で潤みだし、それが辛くて私は階段を駆け上がった。