エレベーターには下向きのボタンしかついていない。
ボタンを押してしばらく待つと、またギギギ…と嫌な音を響かせて、エレベーターが到着した。

内装も稔兄ちゃんと乗った時と同じだ。………ただ違うのは、



「…………?」


中にはボタンが無かった。
稔兄ちゃんと乗った時はあったような気がするのに、今は真っさらだ。四方、どの壁も…。

ボタンを押していないのに、エレベーターは勝手に下の階へ向かっていく。


真っさらな壁に対して扉の上部には、オレンジ色に点滅する階を表す数字が、たくさん記されていた。


「…………っ。」


地下80階どころじゃない。

100階、300階、500階…。

数字は800階まで記されていたけど、どうやらそれを振り切ったらしい。
明らかに800階を過ぎたのに、オレンジの点滅はいつまでも800階の位置にあった。



このエレベーターは商店街じゃなく、地の底へ向かっているんだ…。