「…残念だが、榮 義也。
君に定められていた寿命はたった今尽きてしまった…。
これからは“薬屋”として働いてくれ…。」
僕を突き飛ばした男が、口をにんまり歪めていました。
黒髪に黒い着物に、雪駄(せった)も、古びたチューリップ帽も黒一色の異様な風体の男を、周りの誰も気には留めませんでした。
ただ、男の帽子から突き出た二本の“角”を見た時、僕は一瞬で判断を下しました。
人間じゃない…と。
…今思えば、あれは僕の寿命の終わりを告げに来た、死神のような存在だったのかもしれません…。
見知らぬ男に突き飛ばされ、見知らぬ黒いものが蠢く電車に…轢かれて。
僕は誓いのとおり、“死ぬまで罪を犯しません”でした。