「…――ねえ。やっぱりダメ?」

「ダメ!」

「ダメ?」

「そんなにかわいい顔してもダメ!絶対にダメ!」


僕たちは寝具売り場の布団の前でにらみ合いの最中。

キャンプ用品売り場に寝袋を見に行こうとしたら、寝具売り場に引っ張られた。



で、にらみ合い。

可愛らしく首を傾げてみても、朱里ちゃんには通用しない!

困ったなー。


「朱里ちゃんがこんなに頑固とは知らなかった……」

「そう?知らなかった?」

「……知らなかった……」

「頑固よー、私。ふふっ」


ふふっ じゃない!

ゴン太と散歩に行くとき、「颯太さんの好きにしたら」って言ってなかった?

好きにしようとしたら、頑固ちゃんになっちゃって!

布団なんて買っちゃったら、居心地良くて居座っちゃうかもしれないのに!!


「とりあえず、これでいいよねー」


シングルの布団セットをカートに乗せてるけど、これって結構大きい。

歩いてきてるから、これを持って帰るのは大変。

しかも朱里ちゃんはヒールの高い靴。

こんなの持たせられない。


「やっぱり寝袋が……」

「ダメ!」

「……はい」


こっ、怖い……

朱里ちゃんがこんなに怖いなんて・・・知らなかったよー!!!

恐怖に震える僕とは反対に、朱里ちゃんはご機嫌。

これ以上楽しいことはない!って顔して、カバーを選んでる。

もう朱里ちゃんに反論するの、やめよう・・・

例え、布団カバーがピンクのハートでも・・・