朱里ちゃん、また妄想の世界へ一人旅…

僕が玄関を開けたのも気がついていない。

頭振ってみたり、顔を赤くしてみたり、くるくる変わる表情が忙しい。


「朱里ちゃーん!」

「…………」

「行くよー!」

「…………」

「…――置いていく!」

「あ、待ってー!」


……やっと気がついた。

まったく……。


パタパタと玄関まで来た朱里ちゃんだったけど、今度は別の悩みが発生したみたいだ。

あまり多くない靴を見下ろし


「うーん…」


少し首を傾げてる。

今度は何?何を悩んで……

「よし!これだ!」


そう言うと、少し踵の高い靴を履いた。

黒のシンプルなデザインのその靴は、今日の朱里ちゃんの服に良く似合う。

だけど……


「買い物行くんだよね?」


「そうだよ」

「結構歩くよね?」

「そうだね」

「それで大丈夫?」

「大丈夫!」

「ホントに?」

「……ホントに」


な、何!最後の「……ホントに」は?

少し離れたホームセンターに行くのに、踵の高い靴って!

どうして女の人は踵の高い靴を選ぶのかな?

スタイルも良く見えるし、おしゃれだと思うけど、少し無理してない?

僕はどっちかって言うと、スニーカーを履いている方が好きだな。



「よし!行こう!」


僕の心配とは関係なく、朱里ちゃんは元気に飛び出していった。